那須移住日記 第3話 土地探し
2024.8.30
RyoさんとAyaさんは2023年10月下旬に那須へ移住して那須の賃貸別荘に住みながらリモートワークの前後の早朝夕方と休日に那須の土地を見て回りました。11月から12月中旬頃までの1ヶ月半で10個所の土地を一緒に見て回り、12月中旬に購入する土地を決定、住宅ローン審査を経て2024年2月に土地契約に至りました。
賢明だった土地探し方法
まず最初に、お二人の那須土地探しは今思うと3つの点で非常に賢明だったと思います。ひとつは、我々建築会社と一緒に土地を見て周り、その土地にはどんな家が建てられるか、日当たり水捌けは良いか、コストはどうか、水道と道路は問題ないか等々、専門的なアドバイスをもらったこと。二つ目に、那須住民となって那須の気候特性を体感したことを土地探しに活かし、晴れた日だけでなく大雨の日や風の強い日など天候の良くない日にも土地を見たこと。そして最後に、短い間に集中して多くの土地を見て回ったことです。特に3つ目はすごく大事、土地を決める際に意見の相違が出るのは当然ですが、短い間に集中して土地を一緒に見ることによる場と時間の共有があってはじめて自分達のプライオリティーが形になって見えてくるんです。次に具体的に検討した土地とボツにした理由などを紹介します。すごく参考になると思います。
検討した土地その1: 那須の中心にあって車なしでも生活できる利便性の高い土地
RyoさんとAyaさんが最初に気に入った土地は広谷地交差点の近くの230坪の平坦な土地、スーパーにも歩いていける利便性が気に入ったそうです。那須岳は綺麗に臨めますが敷地や周辺に林はなく農地と住宅が混在した田園住宅地、近隣住民のほとんどはリタイヤ後の東京移住者です。ここなら運転免許のないAyaさんでも安心して住めそう、でも結果はボツ、なぜか?「歳を取ってからのことを考えると住みやすい良さはありましたが、今からどうなるか分からない老後を考えて選ぶのは凄い勿体無いことだと感じました。また、利便性よりも自然に囲まれた中で自分たちで畑やガーデニング、物作りをしたりすることがここでの暮らしの醍醐味だと感じ、違う土地にしたいと思いました。」この土地を辞めた理由、納得です、二人の生活信条が実にすがすがしい。
検討した土地その2: 土地の前に広い田畑が広がる抜け感のある土地
土地所有者の方が当社に来られて「売ってほしい」と依頼を受けた土地です。町道沿いで道路より下がっていて土地が雨水でぬかるんでいる、細長く地形は悪い、でも面積は200坪あって土地の前面は農地が広がっていて抜け感があって気持ちがいい、そんな長短併せ持った土地でした。売主さんが価格はいくらでもいいとおっしゃるので「それじゃあ50万円で」と手を打って早速お二人に紹介しました。一緒に現地を見て景色が開けているのと価格の安さに魅かれて「前向きに検討したい。」と、とんとん拍子で話が進みました。この時点でこの土地に決まりかなと思えたので、翌日に土木会社の社長さんと一緒に道路と土地の高低差を調べて盛り土工事、土留擁壁工事にいくらかかりそうか見積もりを出してもらいました。「盛り土と擁壁工事で600〜800万円くらいかかります。」と伝えると「それでも、いいかも。」の返事。でもその数日後、警報級の大雨が降ったのでこの土地を見に行ったら道路から流入する雨水が半端じゃない、雨が上がって2日経っても水が引けない。このことを二人に伝えると、「私たちも気になって雨の中見に行って、ちょっと危ない土地かなって。。」と、結局ボツとなりました。雨の多い山沿いの土地はやはり天候の悪い時にこそ見るべきです。賢明な判断だったと思います。
検討した土地その3: 那須岳の麓、山が臨める景観の良い土地
11月後半になって紅葉が終わった頃、標高750mくらいの那須岳山麓の350坪550万円の土地をお二人が見つけてきたので早朝一緒に見に行きました。周りに家は無く静かで那須山もよく見える、水道は無く土地所有者が掘った井戸を使う、土地は平坦だが地形が三角形、こんな条件の土地でした。この土地のどこが気に入りましたか?と向けると「景観が良くて周りに家がなく静かだから。」と。私が気になったのはまず井戸水、水質がどうか、井戸枯れしたらどうするかが不安材料だと伝えました。また土地の周辺を歩いてみると西側が崖になって崖底に川が流れていました。川底と土地との高低差は優に10m以上ありそうなので、間違いなく崖地規制がかかって土地の中で家が建てられる場所が相当制限されそう、土地所有者が井戸まで掘ったのに土地を手放すのは崖地規制で家が建てづらいことが分かったからではないか。この点もお二人に伝えました。結局、この土地もボツになりました。ちなみに、土地の販売チラシには崖地規制のことは何も書かれていませんでした。
検討した土地その4: 那須中心地から離れた周りに家が少なく静かで広くて安い土地
「ドライブしていて売地看板を見つけた土地があるので見てほしい。」とRyoさんからメールが届きました。日程が合わなかったので私と設計者でその売地を見に行きました。那須の中心地からは離れたエリアで生活利便性は劣るものの、周辺環境は素晴らしい。平坦で、周辺に家も少なく静か、前面道路は舗装された町道、水道は分譲地の私設水道、価格は300坪で180万円とお得、「いい土地かも」が第一印象でした。ただその私設水道を使っている周辺の住宅別荘を見て回ると古い家ばかりで空き家も多く最近建った家は見当たらない、那須によくある古い別荘地でした。「この先住む人がどんどんと減っていくと私設水道が維持されるかどうかが不安」それを伝えると「水道が不安材料とは想像もしませんでした、ありがとうございました、辞めます。」とRyoさんから返信が返ってきました。余談ですが、那須で土地を探す際の要注意点の一つは水道です。公営水道であれば心配はありませんが分譲地管理会社や自治会で管理する私設水道の場合、将来にわたって維持管理できるのかをみる必要があります。昭和40年代の土地ブームで那須にはたくさんの別荘地が開発されましたが、後発の別荘地は那須の中心から離れた場所にあるため人気がなく住宅数も少ないため維持管理が困難な私設水道も中にはあります。