那須の売土地市場の実情
2023.5.22
前回ブログでは那須のエリアは住環境的に5つのエリアに分けられると説明しました。ではエリアが決まった後、土地をどう探したら良いかについて、今回以降シリーズで解説したいと思います。ブログ初回冒頭にも触れましたが、このブログは私青木真が23年間那須に住み、住宅建築と不動産の仕事をしてきた経験をベースに書いているため個人的主観が反映しています。主観を越して毒舌に近いところもあるかもしれません。公的な移住促進センターなどでよく説明をされる当たり障りのない一般論とは一線を画しています。この点をまずご理解ください。
那須の不動産業者の本音
昨年、那須の某不動産会社の社長さんとこんな会話をしました。
「社長、いい土地があったら紹介してくださいよ。」
「那須の土地仲介は儲からないからあまりやりたくないね。特に500万円を下回るような安い土地は特にね。」
「どうして?」
「青木さん、考えてみてよ。お客さんを何度も土地へ案内するのにガソリン代はかかるは社員の人件費もかかるはスーモの広告費もかかる。売った後も地盤が弱かったとか、土地を掘ったら水が出たとかでクレームがきて値引き要求されることもある。それで仲介手数料は10万円かよくて20万円、これじゃ割に合わないでしょう。」
那須の不動産屋さんの全てがこうとは思いませんが、彼らの本音に近いのではないでしょうか。東京から土地を探しにきたお客様にとっては何百万円もの買い物なので何度も土地について問い合わせたり現地案内を依頼したり問題があればクレームしたりするのは当然でしょうが、不動産屋さんには売買代金の3から5%の仲介手数料しか懐に入りません。都心の高額物件であれば仲介手数料も大きくなりますが、田舎の安い土地の仲介手数料は知れてます。少ない手数料の割に現地案内や境界の確認やクレーム対応などに手間がかかるものです。那須塩原市にある不動産会社では「那須の土地には案内しない。案内にかかるガソリン代がバカにならない。住所を知らせて一人で行ってもらうことにしている。」と割り切っているところもあります。
安い売土地が出ない訳
「那須のどの不動産屋さんに聞いても500万円以下の良い土地がなかなか無い。」先日当社を訪ねて来られた東京のお客様がそんな不満を口にされてました。その方は過去2年間那須で土地を探し続けてきて30ヶ所以上の土地を見て、さらに毎日suumoやアットホームを見て新しい売地が出ていないかチェックされているそうです。先の那須の不動産屋さんの本音からも分かるとおり、不動産屋さんが積極的に地権者と交渉して安い売り土地を探そうとする金銭的なインセンティブが無いため、地権者が売りたいと持ち込んできた物件しか売土地リストには載らない。これが那須の売土地市場の実情です。
分譲地の空き地が売りに出ない訳
那須ハイランド、那須守子の郷、那須東急ヒルズ、相鉄那須など大手分譲地をまわると空き地(建物が建っていない未利用地)が沢山あります。昭和30年代から40年代の列島改造ブームで那須の分譲地は全て売り切ったため分譲地デイベロッパーや分譲地管理会社が所有している所謂「社有物件」はほとんどなくほぼ全ての土地が全国に散らばっている方々の所有になっています。分譲地デイベロッパーや分譲地管理会社は積極的に土地仲介をしません、仲介手数料だけでは割に合わないためです。一方彼らは分譲地内の未利用地を土地所有者から安く買って高く売る「社有物件開発」には熱心です。例えば坪単価5千円で購入して社有物件にして坪単価3万円で売れば、150坪の土地でも375万円の利益が入ります。坪単価5千円150坪の土地を仲介しただけでは利益(仲介手数料)は5万円にも満たないのです。「どうせ使わないのだから坪単価2万円であれば売ってもいい」という土地所有者は沢山いるはずですが、それが表に出て来ないのは、分譲地デイベロッパーや分譲地管理会社が利益がわずかな土地仲介には積極的に取り組まないからです。
分譲地外の売土地が少ない訳
「分譲地は管理費がかかるので分譲地でない土地が欲しい。」当社に土地探しに来られるお客様の多くは分譲地管理費が掛からなくて町営水道が引ける分譲地外の土地を求めています。ただ分譲地でない土地は総じて500坪以上と広いため土地総額も1,000万円前後までかさみますし、さらに建築基準法上の道路に面し、町営水道が引ける土地自体が限られています。コロナ禍以前でしたら分譲地外で500万円前後で環境景観良好な土地も結構ありましたが、コロナ禍以降の那須移住ブームでそれらの好条件分譲地外の土地は全て売り切れました。那須のどの不動産屋さんも「昔のように良い売地がほとんどない。」と嘆いています。
東京の悪徳不動産ブローカーが那須の不動産市場で跋扈している
那須で土地を購入した人、古くから所有している人には、必ず得体の知れない不動産ブローカーから手紙が来て「あなたの土地を高く売ります。」と勧誘されます。それらは全て詐欺まがいの業者で、電話をかけると「高く売るには広告費を出してほしい」とか「木の伐採や下草を刈らないと高く売れない」といってお金を引き出そうとします。この影響で真面目な那須の不動産会社が土地所有者に「土地を売ってほしい」と連絡をしても詐欺取引と勘違いされて連絡が取れないことがよくあります。那須土地市場の活性化を拒んでいる一つの要因でもあります。
那須の不動屋さんといかに付き合ったらいいか
売土地があまり出ないと悩んでばかりいても埒が空きません。やはり那須で土地を購入するには地元不動産屋さんからの情報が最も重要です。那須地元の不動産屋さんは都会の不動産屋さんのようにビジネスライクではなく人間味溢れる方々が多いです。ただ栃木県人特有のリスクを冒さない保守的な気質があるため、お客さん側が都会の取引モードを全面に出したり、買ってやるといった高圧的な態度をとると一気に引きます。非公開の土地情報があっても出してくれません。特に今は那須の土地市場は売り手市場に近い状況なので、うまく関係性を築けないと取引もスムースに進みません。私なりに那須の不動産屋さんとの付き合い方を列挙してみました。
1 メールだけで対面しないのはNG、必ず訪問面談すること
那須の不動産屋さんの社長さんは相手を見て取引の深度を決めます。誠実で熱心な人には親身になって土地を探してくれたりします。都会の不動産会社のようにメールだけで要件を伝えるビジネスライクなスタイルは避けた方がいいです。「土地の場所をGoogleマップで送って」で通じる不動産屋さんはまだ那須では少ないと思います。事前に行く日を予約し、時間通りに訪問し、誠意を持って面談しているうちに、外に出していない土地情報を出してくれたりします。また田舎では今でもFAXが最もポピュラーな送信手段です。資料を依頼して社長さんが「FAXで送ります」と言われても「いやいや、メールで送って」と言い返さないこと。リモート、LINEは使えないと思った方がいいです。また2回目以降の訪問時には手土産持参がいいでしょう。社長さんたちは東京の老舗の和菓子が大好きです。
2 安い土地ばかり要求するのはNG
「とにかく安い土地を紹介してくれ」というお客様が時々いますが、那須の不動産屋さんで一番嫌われるタイプです。本心では500万円以下の土地が欲しいと思っていても、それを全面に出してしまうと「割に合わないお客かも」と思われて良好な関係が築けません。
3 「 場所を教えて貰えば自分一人で見にいく」もやめた方がいい
都会の土地と違って田舎の土地は境界がはっきりしていなかったりします。一人で見に行ってもどこまでが土地の範囲か分からないため無駄になったりします。また大雨の時に雨水が土地に流れ込んだり、周辺の住民に変わった方がいる等々、地元に住んでいる不動産屋さんでないとわからない情報もたくさん聞けます。都会の不動産会社の営業マンにように「土地に案内したら最後、売るまで離さない!」なんて輩は田舎の不動産屋さんにはいませんので安心して土地案内に連れ立ってください。
次回は不動産屋さんを使わないで自分独自で那須の土地を探し買い付ける方法について解説します。