自然素材の外壁はなぜ高い、どうしたら下げられる
2023.5.24
前回までは木造新築建物の構造材について解説しました。構造材によって住宅の耐久性や耐震性が決まる! 断熱材と窓で断熱性が決まる! そのため構造材、断熱材、窓はあまりケチらず良いものを使った方がいいと述べました。今回は木造住宅の「外壁材」について触れます。外壁材は家の意匠、イメージを決定づけると同時に、雨風紫外線から家の躯体を守ってくれるとても重要な建材です。当社は自然素材100%の住宅を標準にしています。読者の皆さんは「自然素材の外壁はどうして高いのか?」「耐久性はどうなのか?」「DIYでどのくらいコストダウンできるのか?」などについて関心や疑問があると思いますので、今回はそれに答えていきたいと思います。
自然素材の外壁とは?
無垢の板張り外壁、漆喰左官塗り外壁、これが主要な自然素材外壁です。現場で大工さんや左官屋さんが一枚一枚、一塗り一塗り手作業で加工しながら仕上げる壁です。今日の戸建て住宅の自然素材外壁のシェアは10%以下です。ハウスメーカーの大部分は非自然素材の外壁(窯業系サイディング、金属サイディング)です。板壁や漆喰壁が少ない要因はやはりコストです。
自然素材の外壁が高い理由
下のグラフで分かる通り無垢の板壁や漆喰左官塗りの外壁コストは非自然素材外壁(窯業系サイディング、金属サイディング)より割高です。材料費自体ももちろん高いですが、板壁や漆喰壁は工程数が多く手間がかかるためです。
1 窯業系サイディングの施工
↓の画像が一般的な窯業系サイディング施工風景です。ボード状になったサイディング材を貼って継ぎ目にシーリングすれば完了です。工場で塗装済みなので現場では塗装も不要です。一枚が大きく加工もさほど必要ないので、床面積30坪住宅で一人でやって4日くらいで終わります。
2 漆喰左官塗り壁の施工
左官職人さんが手作業でモルタル、漆喰などをコテで塗る壁のことを一般的には「ぬりかべ」と呼びます。↓の画像は「外壁ぬりかべ」の構造(レイヤー)を示した模型です。左官屋さんが行う工事は、1 補助胴縁 2 通気ラス網貼り 3 モルタル下塗り、4 モルタル中塗り、5 ファイバーネット埋め込み 6接着剤シーラー塗り 7 漆喰仕上げ塗りと、7つも工程があります。工期は30坪住宅で一人でやって3週間くらいかかります。
3 板壁外壁の施工
板壁外壁の工程は、 1 板の加工 2 板貼り 3 塗装の3工程です。一枚一枚板の反りや曲がりを見ながら貼るので時間がかかります。塗装も養生して塗装するので手間がかかります。30坪の住宅で大工さんの板壁貼りと塗装屋さんの塗装を合わせるとやはり1ヶ月くらいかかります。
板張り外壁は腐る?
自然素材の外壁が使われない理由はコストだけではないようです。偏見やハウスメーカーの”洗脳”によって自然素材の外壁は長持ちしない思っている方が多いようです。例えば「木は腐る」とか。でも水に強く耐久性のあるレッドシーダー材であれば無塗装でも半永久的に持ちます。レッドシーダーより耐久性で劣る杉の場合5~10年ごとに再塗装すれば問題ありません。無垢の木は経年変化が味になります。定期的に汚れを落としたり塗装したりすれば味わいのある外壁が維持できるものです。
漆喰左官塗り壁はカビで汚れる?
20年くらい前にスタッコと呼ばれる西洋漆喰が流行りましたが、北側の壁で黒カビが凄い勢いで出たため多くのハウスメーカーがクレームに苦慮しました。漆喰壁は雨水が染み込んで乾かないとカビが出ます。なので乾きにくい北側の壁でカビが出ます。雨水が染み込まないように漆喰壁を仕上げた後で表面に撥水材を塗ってコーティングすれば、壁に水が染み込まずカビも出ません。撥水材を塗る、ないしは撥水材の入った外壁用漆喰(例えば日本プラスターの漆喰くるむ外など)を使えば綺麗な漆喰白壁が保持できます。
自然素材の外壁でコストを抑える方法
自分達でできるところはDIYする
板壁であれば塗装を、左官壁であれば仕上げの漆喰塗りをDIYでやればそれ相当のコストダウンになります。特に左官職人さんの単価は高いので、下地のモルタルまでは左官屋さんにやってもらい、仕上げの漆喰だけでも自分達で塗れば㎡あたり2,500円もコストダウンできます。↓グラフ参照
レッドシーダーの代わりに安価な杉材を使う
レッドシーダーは1㎡当たり5,800円(横張りベベル、材料費のみ配送費別の原価)~6,800円(縦張りチャネル、同)もする高級材です。国産の杉板で節のあるB級品を使え1㎡当たり2,500円くらいで手に入ります。軒の出があって雨かかりの少ない建物であれば杉板を使って塗装し5年ごとに再塗装メンテナンスすれば問題なく使えるはずです。