田舎に移住して暮らせますか?
2023.4.9
数年前マスコミ関係者から「東京から田舎へ移住を考えている人のためにコラムを書けないか?」と言われてたことがありました。その時はお断りしましたが、コロナ禍以降、地方移住が大きな関心となり、自治体の移住サイトや田舎移住記事をよく目にすることになりました。ただそれらは、田舎暮らしはいいことばかりで、地に足がついていない東京目線で書かれ、イメージ先行の抽象論がとても多く、読んでいて「だまされるな!」とか「もっと生々しい土地や建物や暮らしについて語れ!」と苦々しく感じることがしばしばです。なので、ここらで田舎移住に関する自論を書いてみてもいいかな、と思い立った次第です。
私は23年前に東京から那須へ移住し建築不動産会社を20年間営んできたので、那須でどんな土地を選び、どんな家を建て、どう暮らしたら後悔しないか、について多少語れる立場にあります。ただしあくまで私個人の世界観・価値観、嗜好を色濃く反映した自論です。その点あらかじめご容赦ください。
あなたは田舎に向いているか?
第一回目のテーマです。意地悪な質問を考えてみました。次の20の質問に15以上「いいえ」をつけた人は田舎暮らしに向きません。
Q1 玄関がいつも土で汚れていても気にしない
Q2 梅雨時小さなアリが家に入ってきても気にしない
Q3 ひとり遊びできる趣味やプライベートライフの引き出しが多い方だ
Q4 東京が好きだ
Q5 根性と体力には自信がある
Q6 くよくよしない
Q7 決断が早い
Q8 田舎に住んだら都会でできなかったこと、例えば野良仕事、畑、DIYなどにチャレンジしたい
Q9 雨の中で1時間以上、外仕事ができる
Q10 家族がいなくなっても一人で食と住まいをまかなう自信がある
Q1、Q2について、潔癖症、綺麗好き過ぎる人には田舎暮らしは向いていないです。どんなに気密性の高い高価な住宅でも梅雨時にほんのわずかな隙間から小さなアリや虫は家の中に侵入します。家の周りは虫だらけですから仕方がないことです。また田舎の夏場は毎日のように夕立が降ります。都会と違って土の上を歩いたり土の上で作業したりすることも多いので、濡れたり靴が泥で汚れたりすることは日常なんです。
Q3は田舎暮らしの時間の使い方に関するあなたの考え方を問う質問です。「田舎に住んだらゆっくりとスローライフをエンジョイしたい」とおっしゃる方が多いです。もちろんそれに反対はしません。が、天気の良い日には庭でバーベキューして雨の日には読書を楽しみ朝夕散歩してゆっくり過ごしたいという願望は1ヶ月で実現できてしまい、2ヶ月目からは退屈でやることが無い毎日が続きます。コンサートも演芸場も美術館もおしゃれなレストランも飲み屋街もファッションストリートも田舎にはありません。私の住んでいる周りにも田舎暮らしに飽きて1年で別荘を売り東京へ帰る人が実はすごく多いです。
Q4はパラドックスに思えますが、「東京が嫌いで田舎に移住した」人ほど田舎暮らしに馴染めず東京へ逆戻りする傾向が見られます。「空気が悪くゴミゴミした都会の猥雑さも悪くない、華やかなライフスタイルも好きだ。でもその真逆の田舎暮らしも好き」という柔軟な思考とふところの深い感性を持った人の方が田舎暮らしには向いているように思います。
Q5、Q9は体力的に田舎暮らしに向いているかです。Q3にも関係しますが田舎の暮らしを心底楽しむには、野良仕事、畑、DIYが「必須3科目」です。私の近所に住んでいる方を見ていると、70代でも元気に田舎暮らしをエンジョイされているご夫妻はみなさんこの「3科目」を実践しています。都会ではできなかったことに積極的にチャレンジして新しいライフスタイルと世界観を手にすることに前向きであることがとても重要だと、私は考えます。
Q6、Q7、Q10は私がこれまで23年間那須で不動産、建築の仕事をさせていただいたお客様を観察した結果、決断が早く、失敗してもくよくよせず、自立心のある方ほど、田舎暮らしの負の側面とうまく向き合い、都会とは違う環境やカルチャーに柔軟に順応していると思ったからです。