K様邸の思い出
2016.3.6
昨年8月から着工したK様邸がこのほど完成し、一昨日施主K様に引き渡しをしてきました。
施主Kさんとの出会いは昨年の1月、雪に覆われた厳冬期の那須の当社事務所に現れたのは、おなかの大きな奥様のkさんとご家族さまでした。事務所に入ってすぐに薪ストーブの前で大きなおなかを暖め、これから生まれてくる赤ちゃんをいたわっておられた姿が印象的でした。
暫くしてストーブでからだが温まった頃、Kさんが開口一番におっしゃいました「私ハーフビルドがしたいんです」と。
生後間もないお子様の子育てとハーフビルドの家づくりの両立は難しいんじゃないですかと、その時は私の方からやんわりとお断りしたように記憶しています。私どもの方から「難しいです。」とか「やめたほうがいいんじゃないですか。」と言われれば、普通の人なら10人中10人が諦めますよね。
が、その1週間後、Kさんから全く予期せぬ電話をいただきました。
「是非ハーフビルドで家をつくりたい、自分の置かれている状況も分かっているので、できる範囲でいい、塗装だけでもいいからやらせてほしい」と。
「Kさんは本気なんだろうな、やはり群馬県の女性は根性が半端じゃないなあ。。」
これまで群馬県で5家族様のハーフビルド建築をお手伝いしてきましたが、群馬の奥さまはみなさんとてもタフで、ご主人と対等に現場で仕事をされている姿が私の頭に焼き付いていました。さすがに天下に知れ渡った女性王国群馬。そんな強い群馬県女性のイメージ像が、私にそう思わせたのでしょう。
さてKさん、本当は床貼りや壁のタイル貼りも自分でやりたかったようです。が、私の反対にあって結局は、外壁塗装と、ウッドデッキ作りと、室内塗装をご主人とおふたりで協力しあいながらやってこられました。毎週末東京から埼玉県本庄市までの通いでの仕事でしたから、時間のやり繰りもさぞや大変だっただろうなと思います。
思ったほどセルフ作業範囲が広げられなかったことは、おそらくKさんにとっては不本意だったかもしれませんが、産後間もない時期の炎天下での外壁塗装から始まって、冷たい赤城おろしが吹きすさぶ真冬の室内塗装に至るまで、子育てと並行して一生の思い出となる価値ある経験をされたんじゃないでしょうか。この7カ月間の家づくり、ほんとうにお疲れさまでした。
K様邸はフルビルドに近く純粋なハーフビルドの家ではありませんでしたが、私たちにとっては設計から施工にいたる過程で新たなチャレンジを多く経験させていただきました。
その意味でK様邸は、私と設計者青木昌子にとって、一生の思い出となる家のひとつであることに間違いはありません。ありがとうございました。
これからは思う存分、新居でのDIY三昧の生活をエンジョイしてください。

このキッチンは施主Kさんと家具職人さんと当社の3者による共同事業で作りました。当社が設計と調達を担い、躯体は那須の家具工房マウンテンの家具職人森さんが作り、塗装は施主Kさんが担当しました。今後ハーフビルドキッチン作りに大いに参考となる貴重な経験となりました。

床は猪瀬大工が無垢オーク材のヘリボーンを貼り、Kさんが蜜ろうワックスで仕上げました。猪瀬大工が2週間毎日深夜まで残業しながら悩みに悩んで仕上げたじつに美しい床です。職人魂が染み込んだ当邸一番の造作だと個人的には思っています