若者諸君、田舎で暮らそう―倉本聰さんの流儀
2015.9.17
今年は私の履歴書が面白いです。
日経新聞朝刊の「私の履歴書」に登場するのはこれまで一流の経済人ばかりで、登場する大企業のサラリーマン社長のいかにも優等生らしい出世ストーリーは味気なく退屈で、どちらかと言うとあまり好きではないコーナーでした。が、今年は違います。年初の萩本欽一さんにはじまり、王貞治さん、浅岡ルリ子さん、ニトリの似鳥社長と、実にユニークで波乱万丈の人生を送ってこられた先輩たちが立て続けに登場し、それぞれの人生の悲喜こもごもを面白く読ませてくれています。
そんな中、今年最も興味深く読んだのが、8月に連載された脚本家倉本聰さんの私の履歴書でした。
倉本さんは1970年代から北海道富良野に移住した田舎暮らしの大先輩です。
かくいう小生も、東京に暮らしていた頃、倉本さんが北海道での暮らしをベースに書いたエッセイ、小説、随筆をすべて読破しました。いまこうして田舎に住んでいるのも、倉本さんの思想から受けた影響が大きかったと思います。
さて彼の代表作といえばやはり「北の国から」ですが、倉本さんがこの作品を通して訴えたかったメッセージは「自立」でした。田中邦衛さん演じた主人公黒板五郎の生きざまを通して「自立とは何か」を小学生にでも分かる文章で倉本さんは次のように書いています。
黒板五郎という人間は税金を払っていない。だから国や自治体や他人に頼らず、生活保護など受けずに自力でに生きていこうとする。谷から水を引き、風車で電気を発電し、拾ってきた石や山から切り出した木で家を作る、「税金を払ってないのだから当然だべよ。」黒板五郎という人はそう考える人なのだ。
これはまさしく倉本聰という人の生き方の流儀そのものです。今回私の履歴書を読んで、よく分かりました。
さて私自身はどうだったかというと、なんとなく他に頼って生きていける都会にいつまでも棲みつづけることに疑問を感じ、「自立」を目指し東京の会社を辞め田舎に移住したのが16年前でした。この16年間の自立の過程は、苦しいこと苦々しいことばかりでしたが、自立してみないとと見えない景色があることを学びました。
16年前に田舎に移住するきっかけを与えてくれた倉本総さん、ありがとうございました。
そして今も倉本さんが頭の中で描き続けているという「北の国から」のシナリオの続きが、気になります。