D.I.Y.ブームとハーフビルドについて 第2話
2016.1.8
「日曜大工の達人やDIYマニアのような人がハーフビルドをやってるんでしょ。」と、よく社外の人達から聞かれます。
答えは99%ノーです。
100%でないのは、過去にハーフビルドで自宅を建てた施主さんの中でDIYマニアだった方がほんのわずかですがいらしたからです。本当に少数です。その証拠に、大半の施主さんはハーフビルドを始める時にはじめて工具に触れ、また電動工具も当然所有していないので、始める直前に買い揃えています。
つまりDIYや日曜大工の経験があることは、ハーフビルドで家を建てることの必要条件では全くないのです。世の中の日曜大工・DIYマニアの人の数とハーフビルド・セルフビルドの建築棟数の間にも、あまり相関関係は無さそうです。DIYを趣味とすることとハーフビルドすることとではめざすベクトルの次元が異なる、ということなんだと思います。
でも考えてみたら、木工や左官や塗装といった本来プロの職人だけが手掛けていた領域に素人が立ち入って道具を手にして「できるところは自分でつくる。」この基本的な態度はDIYもハーフビルドも同じです。
それに、おカネを節約したいという経済的動機や、世界で一つのオンリーワンを手に入れたい、自分の好きなものを自分の手で作りたいという自己実現動機も同じです。
決定的に違うのは、関わる人が持っている哲学と感性(センス)です。
DIYを趣味で楽しんでいる人とハーフビルドを決断して実行に移す人とでは、ライフスタイルや住まい、ひいては家族や人生に対する価値観が決定的に違います。
「家を自分の手でつくりたい」と思い行動した当社の施主さんに「なぜ自分でつくろうとしたのか?」と聞くと、ほとんどの方がこう答えます。「欲しい家は自分の手でつくるしかなかったから」「施主の手で仕上げてこそ本物のハンドメイドの味が出せるから」と。つまりハーフビルドする最大の動機は、DIYで作りたいからではなくてDIYで仕上がった家が欲しいからなんです。ハーフビルドを決断した施主さんの頭の中には、日曜大工の技術がどうだとか、DIYの経験があるかないかといった次元の心配事は微塵もありません。
では、ハーフビルドをしてでしか手に入れられない本物のハンドメイドの家とはどんな家なんでしょうか?
仮に同じ設計仕様で同じ素材建材で作ったとしても、プロが最初から最後まで手掛けて完成させた家と、施主さんが参加して内装を自分で手掛けた家とでは全く別物に仕上がります。
プロが手掛けた家は、素朴な自然素材だけでつくったとしても、隙の無い、遊び心の無い、冒険の無い、きれいで完璧でいつまらない家に仕上がります。それはしょうがないことです。「クレームがつけられないように仕上げられた商品」なんですから。
一方、素人が内装を手掛けたハーフビルドの家には、いたるところに素人らしい遊び心の造作やハンドメイドで苦心した形跡が見られます。勿論、住むには支障が無い小さな失敗や笑い飛ばせる勘違いも沢山あり、それらも「本物のハンドメイド」の味となっています。それはあたかも、はき古されて傷もありゴワゴワした風合いが魅力のヴィンテージジーンズを良しとする感性に似ています。
建築の世界を知らない素人の手だからこそ出せた、ゆるくておおらかな仕上げの風合いであったり、計算されていないとっぴょうしもない意外な組み合わせの妙味であったりします。また家づくりの思い出や思い入れといった住む人自身の物語りもハーフビルドで作ったハンドメイドの家には濃厚に刷り込まれています。プロが作った家が「商品」だとすると、ハーフビルドで施主さんが参加して作った家は、ちょと大げさかもしれませんが「施主さんご家族の生きた証(あかし)」なのです。
DIY経験がハーフビルドを始める必要条件では決してないこと、ご理解いただけたならたいへん嬉しいです。
今回はちょと観念的な話しが中心でしたが、次回はもう少し具体的に、世間一般のDIYイメージとハーフビルドの実際とではどこが違うかについてお話ししたいと思います。
それでは次回のブログもよろしくお願いします!(^^)!