ヴァケーションレンタルブームについて
2024.6.16
那須で暮らしていて最近感じていることよもやまを連載で書いていきます。初回はヴァケーションレンタル(貸別荘、以下VR)建築ブームについて。
ヴァケーションレンタル(VR)とは
私が那須へ移住した2000年頃にも貸別荘はありました。ただ当時は別荘オーナーが使わない時に貸し出す本来の貸別荘としての活用が大半で、投資目的で貸別荘を建てるスキームは無かったと思います。当時は不良債権処理と小泉ショックで株価も低迷していたので、別荘に投資する余裕も無かったのでしょう。しかし、東日本大震災直後に放射線量が高かったことで起きた那須の震災建築不況が収まった2015年頃、那須の別荘分譲地管理会社がヴァケーションレンタルという言葉を使って貸別荘を投資目的に建てることを東京の富裕層に勧誘したあたりから、一気に那須のVR建築ラッシュに火がつきました。背景には金余りと低金利、震災不況による那須別荘地価の下落がありました。VRの仕組みですが、オーナーが建てた別荘をVR管理会社(別荘分譲地管理会社)が管理し貸別荘として宣伝集客する。1日あたり5〜6万円くらいで貸し出し、清掃費用2万円弱を差し引いた残り3〜4万円を、オーナーとVR管理会社(別荘分譲地管理会社)が折半する、こんな仕組みです。建築コストが高騰する前は「貸別荘の収益で投資が回収できる」と営業していましたが、さすがに建築コストが高騰した今では「別荘の維持管理費の一部が貸別荘収益で回収できる」と営業トークも変わってきています。それでも那須のVR建築ラッシュは続いています。先々月の日経新聞にも那須のVRラッシュが記事になりました。私の自宅の隣地でも今年になってなんと2棟のVRがオープンし、それまで静かだった住環境が一変しました。
青木さんの会社ではVRやらないのですか?と時々聞かれます。私は今の那須のVRにはどちらかといえば反対の立場なのでやりませんし、お客様におすすめもしません。私が問題視しているのは次の3点です。
高い稼働率はいつまでも続かない
VRを積極的に営業する那須の分譲地管理会社の営業から「年間稼働率は8割くらいです。」と言われると「建ててみようか」と心が動かされるのは確かに分かる気がします。でも冷静に考えると、高い稼働率は建築直後の数年間で、その後建物の老朽化とともに稼働率は右肩下がりになります、まして今のように毎年那須だけで100棟以上のV Rが新規参入して供給過剰になりつつある状況では、稼働率が下がるのはもっと早まります。投資は20年くらいのスパンで考えないといけないのに。。那須のVRブームをあまりよく思わない最大の理由です。
大人数を収容するため建築コストが膨れ上がる
「貸別荘を使用するのは10人くらいの大人数グループが多いのでそれなりの部屋数が必要です。」別荘管理会社の営業はVRを建てようと検討している土地オーナーにこのように説明します。10人が泊まれる別荘となると床面積は40坪は必要です。建物も小洒落ていて高断熱、設備も高品質、しかも暖炉のある豪奢な別荘となると建物だけで4000万円から5000万円くらいの建築費になります。
周辺住民との軋轢
我が家の隣地にも今年になって2棟の貸別荘がオープンしたと先に書きましたが、どちらもオーナー利用を前提としていないVR収益目的の貸別荘です。なので毎週末、我が家は隣の貸別荘から出るバーベキューの匂いと深夜まで響き渡る大声で嫌な気分になることもあります。利用客がバーベキューの片付けをしないで飲みつぶれた翌朝には、カラスが残飯を撒き散らす光景を目にします。那須の他の別荘地でも同じような住民のVRに対する不満をよく耳にします。